2024/08/07

論語『直きを挙げて』

 論語に
直(なおき)を挙げて是を曲(まが)れるに置けば、則ち民服す。
  曲がれるを挙げて是を直に置けば、則ち民服せず。』とあります。

 これは、君主の哀公が「いかにすれば民は服しますか?」との質問に対して、
孔子が「材木業者が、板材を置く際に真直ぐな板を曲がった板の上に置くように、真直ぐな正直者を人々の上に置けば、その組織は自然と正常化され、人々は安心して活動することができます。逆に曲がった不正直者を人々の上に置けば、その組織は乱れ、人々は安心して活動することがでません。」と答えたものです。

 会社において誰が上司になるかは、さまざまな要素で決定されると思いますが、「上司が正直者であるかどうか」は、部下にとって安心して働く上で、大切な職場環境の1つであると思われます。

また
善人、民を教ふること七年ならば、また以て戎(じゅう)につかしむ可し。』とは、
「完全ではなくても善良な人が、七年という長い期間教育すれば、戎(軍事)に従事させることができる。」と孔子が述べたものです。

更に
教えざるの民を以て戦ふは、是れ之を棄つと謂う。』と続きますが、
これは「教育を施さない民を使って、戦争することは、民を打ち棄てる行為である。」
と厳しく孔子が非難したものです。

 人材不足の今日であればこそ、貴重な人材を、まずは善良な上司により十分な教育を行い、真心(真ん中の心=忠)を以って働いて頂ける人材を育成して行くことは、会社の発展にとって重要なことと思われます。


2024/08/05

渋沢栄一と論語について(上司の心構え)

2021年のオリンピックが終わり、NHKの大河ドラマ「晴天を衝け」も再開されました。
主人公は、『渋沢栄一』で明治の時代を生き、600社近くの起業に関わり、近代日本を作ってきた一人です。
 渋沢は、『孔子』自身の発言や振る舞いを書いた『論語』を生きる規範としており、同じく論語を愛読して『菅原論語』を編纂した『菅原道真』が『和魂漢才』を提唱したのに対して、渋沢は『論語とそろばん』を記述し『士魂商才』を提唱しました。
 そして、『士魂』も『商才』も「論語」が最も基礎となると述べ、ことに「商才」というものは、もともと『道徳』を基盤としているものであり、「道徳」から外れたり、嘘やううわべだけの軽薄な才覚は、いわゆる「小才子」や「小利口」であって、決して本当の「商才」ではなく、「商才」は「道徳」と一体であることが望ましく、「道徳」の書である「論語」によって「商才」も養えると述べています。
 ちなみに、『論語』を社労士として少し調べてみると、上司が部下に対する際の心構えのヒントになる文章が三つほど見つかりましたので紹介いたします。

①『君は臣を使うに礼をもってし、臣は君に使うるに忠をもってす
これは、人君が臣下を使うには『礼儀』を以てすべく、人臣は主君につかえるには『忠』すなわち『真心』をもってすべきである。という教えです。

②『上、礼を好めば、すなわち民使ひ易し
これは、民を巧みに心安く使おうとするには、まず以て上に立つ者が、礼儀を守るようにするがよい。という教えです。

③『上に居て寛ならず、礼をなして敬せず、喪に臨みて哀しまずんば、我何を
 以て之を観んや

これは、上に立ちながら寛大ではなく、礼儀を行うにその根本たる敬(うやまいの心)をつくさず、喪に臨んで哀悼の情をつくさないとういう風であれば、何のとりえも見出すことは出来ない。と孔子が述べたものです。

以上、労務管理の上からも、約2500年前の『孔子の教え(論語)』は、読んでみると「目から鱗」の箇所が多数ありました。